イラストレーターおぐらみどりの日々雑記


by yama-humoto
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

入院日々雑記4

秋田という地で、まさか入院するとは思わなかった。住み始めたとはいえ、ちょっとアウェイ感がある…かと思いきや、東京の病院よりもリラックスして過ごせた。
ほとんどのベッドがカーテンを引いているので、ほぼ個室。そして横になって休んでいると、あちこちから秋田弁の会話が聞こえてくるのだ。
私は耳よりも視覚で確認できるたちなので、音だけだとかなりな「空耳」。ネイティブな秋田弁はなかなか聞き取れない。先日も近所のかあさんが何か慌てて電話して来た。そのとき「みずが!みずが!」というので「水?」と聞き返したら「みず!」といいかえしてきた。全く同じ発音なのだけど、言い返して来たってことは「水」ではないのだな…という事だけは分かった。夕飯の支度をしている頃になって急に「道か!」と膝を叩く。

山形で赤い実を売っていて「ぞうみ」とかいてあった。
何の実か聞いた所、「私らは昔から“ぞうみ”といっていて、正式名称はしらない」とのことだった。「ぞうみ、ぞうみ…」と口の中でつぶやいていて「ガマズミの“ずみ”か!」と後々になって分かった。
こちらのなまりはそういう具合に、口をあまり開かないように発音すると、元の言葉が見えて来たりする。その中には、日本古来の美しい言葉も残っていたりもする。

住んでいるとはいえ、普段あまりネイティブな人と一緒になる事もないので、ここではヒアリングの良い勉強?になった。

看護師さんたちは高齢者が多いので、がんがんの秋田弁で接する。お年寄りたちにとても優しいなあと思う。標準語できちきち言われるより、絶対リラックスできもの。
まるでおばあちゃんと孫娘的な会話が周りで聞こえて、微笑ましい。

大概は病気だし、病院だから、ネガティブになりやすい。夜眠れないなど、ぼやく人がほとんどだった。
けれど、一人、素敵な人がいた。

3つ目の部屋に移った時、96歳のおばあさんが入って来た。一緒に住んでいるという娘さんがほぼ毎日付き添っていたのだけど、しじゅうなにかしら会話していて、でも「なになにすると、どうなるから、やるな〜」とかそういう注意がほとんど。おばあさんの耳が遠いのもあって、「あ〜?」「だ〜か〜ら〜」と何度も同じ事を繰り返している。はじめはあれだけ何度も聞くので、やっぱり認知症もはいっているんじゃないかなあ?と思った。看護師さんもそう思っていたようだ。けれど、違った。おばあさん、ちゃんと理解していて、覚えているのだ。トイレも自分でいかれるし、ナースコールもできた。
「今日、看護師さんと話したけど、私の言った事通じてなかったぞ。ほっほっほ」とか「今日はあっつ〜いタオルで背中を拭いてもらって、気持ちよかった〜(心底きもちよさそうに)」と夕方来た娘さんに話していた。娘にしかられても、「ほうっほっほ」と可愛く笑う。
多分、家でもず〜っとこういう会話のやり取りをしてるんだろうなあ。しゃべり方によっては、うるさい!といわれそうな会話量だけど、不思議と微笑ましくて温かく、ずっと聞いていたいような空間になる。
おばあさんは初めのうちは「病院にきたんだから死ぬんだな」といっていた。「病院にきたんだから死なね〜の」と娘。
数日たって、病状が落ち着いてくると「せっかくここまで生きたんだから、もっと生きたいなあ。生きてると楽しい事たくさんあるもんなあ」と楽しそうに話していた。
カーテン越しに聞いていて、思わず感動してしまった。
「ネコが待ってるから、そろそろかえるぞ〜」と娘さん。そして、去り際に「あ、はたはたがうまく漬かったぞ。」「食べたいなあ〜」「食べられるようになったら、焼いてもってくるからな」
この親子、とても仲がいい。そして、これだけ普段から会話しているので、おばあさんはぼけずに、心も身体も健康なんだろうなあと思った。
会話量と認知症の関係、あながち間違っていないんじゃないかと思う。

こんな風に、聞き耳をたてるでもなく秋田弁ヒアリングをしていて、気になる言葉があった。
それは「○○こ」の“こ”。秋田弁では、なにかと単語に“こ”をつける。「鍋っこ」とか「飴っこ」とか「ボタンっこ」とか…。なかなか可愛らしくなって微笑ましいのだが、つくものとつかないものの区別がわからない。
入院中聞いたのは「薬っこ」「玉っこ(薬の錠剤の意)」「粉っこ(粉状の薬の意)」「熱っこ」等々…。
「血圧」や「入れ歯」にはつかないようだった。
でも、なんと!「入れ物」には“こ”がついた!「入れ物っこ、あるか?」と。どういう法則かやっぱり今ひとつ分からず。フランス語の女性名詞、男性名詞みたいなものか?(これもよくわからない)

退院間近になった頃には、私も秋田弁しゃべれるかもしれない…と思えるまでになった。イントネーションとか、そんなののリズムが分かって来たような。
これって、外国に長くいるうち身に付いてくるのとおなじだろうな。
せっかく習得できそうだったけど、退院となり、バリバリの江戸っ子(?)の、べらんめえ会話(相方の)に戻ってしまい、やっぱりしゃべれるのは無理そうだ。
[PR]
by yama-humoto | 2013-12-15 17:54 | 日々